嫁いだ以上妻の役目は果たしますが、愛さなくて結構です!~なのに鉄壁外科医は溺愛を容赦しない~
 キスではなく、汚れだったらしい。

「あ、ありがとう」

(勘違い……! 恥ずかしい……!)

 ひとりで意識して、これではまるで期待していたようではないか。

(いいえ、期待なんてしてない……けど)

 一瞬、迷ったのは確か。そして迷ったということは、ほんのわずかでも、キスしてもいいという気持ちがあるということ。

「美七」
「はいっ!」

 ドキッとしながら、知らず俯(うつむ)いていた顔を弾かれたように上げる。

「今夜は論文の執筆があるから、かまわず先に寝ていてくれ」
「わかりました。でもそれなら、なおさら洗い物は私がやります。紘生さんはお仕事を優先してください」
「仕事前の腹ごなし代わりだ」

 本当に効率アップに繋がるのかは怪しいが、もし気を使ってくれているのならこれ以上食い下がるのは逆に失礼かもしれない。

「ありがとう。それじゃあお言葉に甘えて。その間に私はレシピサイトを見て明日のメニューを考えますね」
「俺の健康のために?」
「ええ。それと、できることが増えるのは楽しいので」

 美味しいと喜んでくれる人がいるならなおさら。

 そう心の中で続けた美七は、リビングのソファに腰かけスマホを手にした。



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