一番星は君ひとりだけ
また彼女と2人きりになる。気を失って寝ているとはいえ、ドキドキする。
はあ…ほんと俺何やってんだろ。
2時間ほど経って、彼女がむくっと体を起こす。
「ここどこ…?」
「起きた?」
初めて聞いたその声は、喧騒な街では消え入るような小さな声だった。か弱く、守ってあげたいような声だ。
俺の存在に気付くと、彼女は案の定ビクッとする。
「そんなに驚かないでよ。別に、変なことしようとして家に入れたわけじゃないよ。俺のこと、誰だか分かったからか、ビックリして気失ったんだよ、君」
呼吸が荒い彼女は、少しも俺と目を合わせようとはしない。
「気分はどう?お家帰れそう?」
顔に手を伸ばすと、少し抵抗するような様子を見せる。
「ごめん。怖い…か」
まずは家に帰してあげないと。18~19歳くらいだろう。門限なんかがあったら、怒られてしまうし。
「名前、聞いてもいい?」
「…才菜」
「才菜ちゃん?」
「…っ、うん」
推しに名前を呼ばれるのはなかなか大打撃らしい。
「いくつ?」
「…今年の冬で22歳」
「20歳超えてるんだね!」
俺が23歳、だけど早生まれだから学年は2個上ってとこか。丁度いい年齢差?なんちゃって。
10代かと思ったから、少し童顔なのかな。