アルト、ハロウィンデビューする【アルトレコード】
「あ!」
 男性が声を上げ、私は首をかしげた。
「どうされました?」
「バッテリーが……」

「足りないんですか?」
「はい。投影機のバッテリーが残り5%になってました」
 男性ががっくりとうなだれる。

「これでは順番が来るまで持たない」
「予備のバッテリーはお持ちですか?」
 私は思わず聞いていた。男性は力なく首をふる。
「もう使ってしまいました」

「会場で借りられないか、聞いてみます」
「ダメですよ、規約にバッテリーの貸し出しはしていないと書いてありました」
 男性の声に、女の子が不安そうに見上げる。

「パパ? どうしたの?」
「沙織……コンテストに出られないかもしれない」
「どうして!?」
「ごめん、パパのミスだよ。古い機械だから、思った以上に電気の消費が大きかったみたいで。バッテリーも古くて既定の量を充電できてなかったんだろう」
 男性は顔を悲しそうに歪める。

「そんな!」
 ショックを受けた女の子は今にも泣きそうだ。

「ご自宅からホログラムのデータを送れないんですか?」
「うちの撮影の機材が古くて、ここの機械とは規格が合わないんです」
 男性が力なくうなだれる。
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