アルト、ハロウィンデビューする【アルトレコード】
「先生……」
 アルトが私に声をかけてくる。
 なにを言いたいのか察した私は場所を変えてアルトに話しかける。

「どうしたの?」
「先生、ぼくの分のバッテリーを彼女に渡せないかな」
 やっぱり。私は予想通りのアルトの言葉に目を細める。

「だけど、こっちも残量が半分なの。貸してあげたらアルトは出られなくなるよ?」
「それでもいい。あの子、すっごく楽しみにしていたみたいだもん。ずっと病気で外に出られなかったんでしょ? ぼくは病気じゃないから」

「……本当に、それでいいの?」
「うん」
 決意を込めた返事に、私の胸が熱くなる。
 アルトはいつの間にこんなに成長したのだろう。
 いい子に育ってくれて、こんなうれしいことはない。

「じゃあ、バッテリーは彼女に貸すね」
「うん、ありがとう先生! せっかく連れて来てくれたのにごめんね」

「いいよ。アルトの気持ちが一番だからね」
 私はホログラムに入れていたバッテリーを元のものに入れ替えた。少しくらいは残量があるから、もしかしたらアルトの出番まで持つかもしれない。

 ステージ脇に戻ると、私は男性に話しかけた。
「もしよかったらこれを使ってください」
「え!?」
 男性は目を丸くして私の差し出した充電器を見る。
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