アルト、ハロウィンデビューする【アルトレコード】
 私はバッテリーを確認する。アルトがはしゃいで歩き回ったせいで、けっこう消費してしまった。予備バッテリーに取り換えたから、コンテスト終了まではもちそうだ。

 リアル参加部門の出番が終わり、いよいよホログラム参加部門というときだった。
 走って駆け込んでくる親子がいて、私はそちらを見た。
 先ほどの親子だ。お父さんは息を切らせている。ホログラム装置の肩紐が肩に食い込んで痛そうだ。

「なんとか間に合った……」
「ごめん、お父さん」
 女の子はしょんぼりしている。きっとはしゃぎすぎてぎりぎりになってしまったのだろう。

「大丈夫、点呼には間に合ってますよ」
「ありがとうございます」
 声をかけると、男性は笑みを浮かべて頭を下げた。
 係員による点呼を終えると順番を告げられる。女の子のあとにアルト、という順番だったので、並んで待った。

 自然と、彼らは会話をすることになった。
「私は沙織なの。あなた、お名前は?」
「ハルト」
 アルトは今日だけの偽名を名乗る。

「ハルトはどこから来たの?」
「えっと……」
 アルトが私を見上げるので、私は自分が住んでいる地名をあげた。

 そうして、女の子はさらに話す。
 最初は緊張していたアルトも、しだいに打ち解けてしゃべるようになった。
 それをほほえましく見ていたときだった。
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