アルト、ハロウィンデビューする【アルトレコード】
 アルトはどことなく誇らしげで、だから私は内心を顔に出さないように心がけた。
 彼が自分の願望を抑えてまで人の役に立とうとしている。その心を誇ることはあっても、決して私が悲しむ顔を見せてはいけない。

 いよいよ、沙織ちゃんの番が訪れた。
 彼女は父親とともにステージに立つ。父親が投影する彼女はかわいらしくダンスを踊り、会場を沸かせた。
「よかった、沙織ちゃんが参加できて」
 アルトが嬉しそうに言うから、私は思わずアルトを指で撫でた。

「わわ! なにするの!」
 端末だから触感センサーはない。だからアルトはいきなり大きな指の映像をみるはめになって驚いたのだろう。

「アルトが良い子だから、ヨシヨシしたくなったの」
「やめてよ、もう小さな子供じゃないんだから」
 アルトが照れながら文句を言うから、私はふふっと笑った。

 沙織ちゃんのダンスが終わり、彼女と父親がステージから降りて来る。
「ありがとうございました! すみません、旧式なのでたくさん電気をくっちゃいまして」
 男性はお礼をとともにバッテリーを抜いて返してくる。残量は0%になっていた。

「ありがとう、おねえ……」
 言いかけた沙織ちゃんの姿にざざっとノイズが走ったかと思うと、姿が消えた。
 本当にぎりぎりだったようだ。それでも彼女が参加できて、本当に良かった。

「お役に立てて良かったです」
 私はにっこりと笑みを返した。男性が離れて行くのを見てから、私は係員を探す。
「では、次の方、ステージへどうぞ!」
 司会の言葉に、私は近くの係員に言った。
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