アルト、ハロウィンデビューする【アルトレコード】

「ねえ、お願い！」
　アルトにすがるような目で言われ、困ってしまう。こんなときは北斗さんに判断を仰ぐのが一番だ。

「北斗さんが許可したらね」
「やったあ！」
　喜ぶアルトに、まだ許可されてないんだけどな、と私は苦笑した。

　私はさっそく北斗さんにアルトのリクエストをメールした。
　すぐに北斗さんから通信が入る。
　応答をクリックすると、アルトの映るモニターの隣のディスプレイに、北斗さんが映った。

「アルトがハロウィンイベントに行きたいって？」
　挨拶もなく切り出され、私は頷く。

「なにごとも経験なので……」
　ちらりとアルトを見ると、彼はホログラムになって私の隣に現れた。

「北斗、ハロウィンの話！？」
「そうだよ」

「ねえお願い、行ってみたい！」
「うーん……基本的には許可したくないんだけど」
　北斗さんはアルトを見て考え込む。

「みんな仮装してるし、ホログラムでも参加可能なんだよ？　こんなイベントめったにないんだから！」
　確かにその通りだ。

「……ＡＩと人間との共存のためにも、人間の娯楽を知るのは必要だと思います」
　私は切り札を北斗さんに言った。『ＡＩと人間との共存』は北斗さんの夢だ。カードを切るのが早かったかな、と思ったけど……。