アルト、ハロウィンデビューする【アルトレコード】
「バレないようにできる?」
 北斗さんの言葉に、アルトはぱあっと顔を輝かせた。
「できる! 絶対バレないようにする!」
 期待に満ちた声に、北斗さんは苦笑した。

「わかった。先生、しっかりアルトを見張っててね。絶対に目立たないようにすること」
「はい!」
 私は喜びと緊張が入り混じった声で返事をした。

 通信を切ると、すぐにアルトは言う。
「ぼく、恐竜の仮装がしたい!」
 私は顔をひきつらせた。

 衣裳のプログラムを組むのがめんどくさそう……。まず恐竜を調べるところから始めないといけないし、恐竜好きのアルトは細かいディテールにこだわって注文を付けるに違いない。

「ダメよ、目立っちゃうから。もっと目立たない、ハロウィンらしいものにしようね」
「えー?」
 アルトは不満そうに口をとがらせる。

「黒猫とかどうかな。きっとかわいいよ!」
 言いながら、頭の中にはかわいく猫の仮装をしたアルトの姿が浮かぶ。うん、絶対にかわいい!

「……じゃ、先生も仮装して」
「私も!?」
 アルトの妥協案に、私はすっとんきょうな声を上げてしまった。自分が仮装するなんて考えてもみなかった。

「黒猫と言えば魔女の使い魔でしょ。先生が魔女のかっこうしてくれたら黒猫でがまんする」
「うーん……」
 こういうとき、知識があるのは厄介だ。言いくるめられない。
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