アルト、ハロウィンデビューする【アルトレコード】
「わ、商店街だ! 本で見た通りだ!」
 アルトは解放感にはしゃぎ、あちこち走り回った。驚いた人々とぶつかりそうになり、私は都度、謝って回った。

「走っちゃダメよ、大人しくして!」
「だって、先生、外だよ!」
「わかったから!」
 慌てて追い付いてアルトを抱き留めようとして、手がすかっとすりぬける。

 アルトのホログラムには慣れたつもりだけど、たまにこうしてホログラムであることを忘れてしまう。

「人がたくさんいる。みんな楽しそうでいいな」
 立ち止まったアルトはきょろきょろと見回している。その顔が輝いていて、やっぱり来てよかったな、と頬が緩む。

「ねえ、あの人、風船を配ってるよ」
 にたにた笑うかぼちゃの着ぐるみが、子ども限定で色とりどりの風船を配っていた。

「ぼくもほしい!」
「うーん。ホログラムでももらえるのかな。とりあえず行ってみよっか」
 私はアルトと一緒に歩いてカボチャのところへいく。

「風船ください!」
「風船ちょうだい!」
 アルトの声に、女の子の声がかぶった。

 私たちがそちらを見ると、父親らしき男性に連れられた女の子がいた。妖精のかっこうをしていて、かわいらしい。アルトより年下に見える。

 父親はアタッシェケースを肩から下げていた。よく見ると、旧式の携帯ホログラム投影機だ。あれでは重いしかなりの電力を消費するだろうに。実際、もう秋であるにも関わらず男性は汗まみれになっていた。
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