アルト、ハロウィンデビューする【アルトレコード】
「ぼ、ぼくだって。先生の手作りなんだから……」
「先生? 教師でいらっしゃるんですか」
 男性の言葉に、私は慌てる。
「あの、えっと……家庭教師です」
 私はとっさに言い繕う。当たらずとも遠からずだ。嘘は言ってない。

「ああ、そうなんですね」
 男性は納得したように頷く。
「元気なお嬢さんですね。今日は遠方からの参加なんですか?」
「いえ、それが……」
 男性が言い淀むと、女の子が続ける。

「私、前まで病気だったの。はっけつびょうっていう病気。なのましんっていうすごい機械で治したのよ!」
 えへん、と胸を張って彼女が答える。
 そんな大きな病気をしていたなんて。元気そうな姿からは想像ができない。

「病気が治ってよかったね」
「うん。でもまだ外出はダメって言われたの。だからホログラムなのよ!」
「……外出できないのって、嫌だよね」
 アルトが私の陰から彼女を見て言う。

「あなたも病気なの?」
「ぼくは……違うけど。でもなかなか外に出られなくて」

「アル……ハルト」
 私は彼を止めた。思わずアルトって言いそうになっちゃう。ハルトなら音が似てるから間違えてもセーフと思いたい。
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