かわいさの暴力【アルトレコード】
 北斗さんは左手をこめかみに当て、考えるそぶりを見せた。
「私もちゃんとアルトに指導しますから!」
 私は祈りの形に両手を組んで背の高い北斗さんを見上げる。ちらりと見るとアルトも同じようにして北斗さんを見上げていた。ああ、なんてかわいいの! 私だったらこんな姿でお願いされたら秒殺だ。だけど北斗さんは……。
「ダメだよ」
 予想外の反応に、私は硬直した。
「義体は高いんだよ。プロトタイプだから各部品も高額で、あれですら百万するんだ」
「百万……」
 ぬいぐるみみたいな無邪気な顔をして百万。
「そのお金、君たちが出すとでも?」
「そ、それは……」
 私はぎゅっと眉を寄せる。
 貯金はいくらあったかな。奨学金は返し終わったけど、一人暮らしだから固定の出費があるし、転職したててでボーナスも期待できないし……。
「お金……ぼく、持ってない」
 アルトがしょんぼりとうつむくのが見えて、私の胸がえぐられた。
 喉まで出かかる言葉を必死に抑えようとするが、アルトを見ているとこらえきれない。
「……ぶ、分割なら……!」
 ああ、言っちゃった。
 私は自分の顔が渋くなるのを止められなかった。
「本気で言ってる?」
「本気……です」
 ああ、さよなら私の百万円。
< 12 / 14 >

この作品をシェア

pagetop