かわいさの暴力【アルトレコード】
「アルトは学習意欲が強いAIなのね」
「そうなの」
 私は瞬時に考える。アルトについて、今はペットAIからサポートAIへの変更を検討中だと伝えているから、それをふまえて辻褄の合う嘘を言わないといけない。
「わあー、かわいいね。ふさふさで。ぼくも(さわ)れるといいのに」
 アルトは寂し気にうつむく。
 そのときだった。
「わん!」
 AI豆柴が吠えて、アルトはびくっとして目をまんまるにした。
「なんで吠えたの!?」
「アルトが寂しそうだったからじゃない? 動物って人の感情を察するから」
「そうだね。これはAIペットだから、映像を解析、分析して判断してるの。寂しいときに寄り添ってほしい人間の感情に寄り添えるように。その点では本物以上ね」
「へえ……」
 アルトは複雑な表情で犬を見つめる。
 犬は舌をだしてアルトを舐めようとするが、ホログラムなのですかっと通り過ぎてしまう。
 犬はなんども舐めようとするが、すべて通り過ぎていた。
「これ、なにしてるの!?」
「犬の習性で、舐めるのは愛情表現ね」
「へえ……」
 アルトは手を出すが、犬の舌はその手も通り過ぎた。
「エラー、E05。エラー、E05。確認願います」
「わ、しゃべった!?」
 犬から人工音声が出て、アルトがまた驚いた。
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