かわいさの暴力【アルトレコード】
 翌日。
「また秤さんのところへ行きたいな。わんちゃんに会いたい」
 アルトに言われ、私は少し考える。
 今日の勉強はまだ終わってないし、昨日はAIペットにエラーを出させてしまった。それに、あまり頻繁に行くのは秤さんの邪魔になるだろう。
「勉強、まだ終わってないでしょ」
 私はそう言ってアルトを止める。
「帰ってからちゃんとやるから! ねえ、お願い!」
「うーん……」
「あれから調べたんだ。豆柴って柴犬より小さいんだよね。秋田犬は似てるけどもっと大きくってふさふさで、それから……」
 アルトはとうとうと犬について話し続ける。
 私はアルトをどう止めようかと考えながらそれを聞いていた。
「……ねえ、ちゃんと聞いてる!?」
 強めに言われ、私はハッとした。
「うん、聞いてるよ」
「だから、ね、秤さんのところ行こ?」
 甘えるアルトの顔を見ると、あんまり強く拒否できなくなってしまう。アルトもきっとそれがわかっててねだっているに違いないのだけど。
「……今日行ったら、当分は行かないようにできる?」
「できる!」
 アルトが顔を輝かせ、私は自分の甘さに苦笑を浮かべた。
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