はいはい、こちら中野通交番です。 ただいま熱愛中。
 無線機を載せている机もそのままだ。 40年使い込んだらしい。
別に新しくする必要も無く、先端技術を組み込む必要も無く、無線機を載せていればいいのだから。
 これほどに金の掛からない交番も珍しいだろうなあ。 これで俺が居なくなったらここもお払い箱になるわけだ。
「10月だったわよね? 交番が閉鎖されるのは?」 「そうだなあ。 その前に表彰するとか言ってたな。」
「え? 交番を表彰するの?」 「俺なんだって。」
「へえ。 でも何で?」 「さあねえ。 最期の巡査だからじゃないのか?」
「お父さんもやっぱり平から出世しなかったのね?」 「出征してたら今頃は死んでるかもよ。」
「それは嫌だなあ。 寂しいじゃない。」 「そう思う?」
「思うわよ。 アホで間抜けで役に立たない人でもこうして旦那になってくれたんだから。」 「アホで間抜けで役立たず? 言うなあ お前。」
「もしかして「お前は胸しか取り柄が無いだろう?」って言おうとした?」 「いやいや、、、。」
 麻理は奥の本棚に目をやった。 「本がいっぱい有るなあ。」
「姉ちゃんが置いていった本だよ。」 「あらまあ、あの人ってこんな所にまで迷惑を掛けてたの? 嫌ねえ。」
「しょうがねえよ。 俺しか相手するやつが居なかったんだから。」 「寂しい人ねえ。」
 そこへ二階からドローンが飛び立つ爆音が響いた。 「いやいや、すごい音ねえ。 びっくりするじゃないよ。」
「これを10時と3時にやるんだ。 おやつみたいだろう?」 「そうねえ。 お腹空いちゃった。」
「よし。 食堂に行こうか。」 「え? 仕事は?」
「今日はお、や、す、み。」 「そうなのか。」
というわけで二人で近くのうどん屋へ、、、。 ここは大盛うどんが美味いらしい。
 「今日は力うどんにしようかな。」 「じゃあ私は月見ね。」
「並盛ですか?」 「俺は大盛でいいよ。」
「私もそうするわ。」 「畏まりました。」
静かな昼下がり。 夫婦で揃ってうどんを啜る幸せ、、、。
 大盛うどんを二人でフーフーしながら食べている。 子供の頃に呼んだ本では未来の食事は粒粒を飲むだけなんて書いてあったけどなあ。
そもそも21世紀になると超近代的なビルが立ち並びエアカーが走り回る予想図をよく見掛けたもんだけど、実際には何も変わらなかった。
 というべきかどうなのか、、、? なんせ驚くような技術の進歩は21世紀に入ってからなんだもんね。
それが証拠に台所は今も昔も変わらない。 システムキッチンが大きくなったくらいかな。
 そして昔はガスだった炊飯器が電気で自動になった。 さらには洗濯機も洗濯物と洗剤を入れてボタンを押したら最後まで自動的にやってくれる。
でも設定は人間がしなきゃいけないんだよね。 何処までやれば完成するんだろう?
 うどんを啜りながら麻理は何かを考えている。 時々俺の顔を見ては「うーーん。」と声を漏らす。
「何を考えてるんだい?」 「あなたの将来のことよ。」
「俺の将来だって?」 「今は元気だけどいつ倒れるか分からないんだし、、、。」
「倒れた時は倒れた時だ。」 「とはいうけどさあ、今からいろいろと手配しなくて大丈夫?」
「そうだなあ。 お互いに60過ぎたんだもんなあ。」 「そうよ。 ボケたらあっという間なんだからね。」
 店の中は静かである。 数人の女性客が月見うどんなどを啜っているくらいだ。
今は2055年。 あれだけ暴れていた真っ赤な国も最後には黙らされて分解されてしまった。
それに倣うように共産主義国は次々と御旗を下ろしていった。 そしてみんなは日本の下に集まったのだ。
 その時、初めてそれぞれの国旗の意味が明らかにされたんだ。 有史以来の衝撃だった。
世界の国々がなぜ星や月をリマークして使っているのか? それは日の丸に敬意を表すためだったのだ。
日の丸、それは言うまでも無く太陽の象徴である。 日本以外では使うことを許されない旗であったのだ。 30年前、国会ではやっと国旗損壊罪が刑法に明記された。
破いたり燃やしたりすれば命に係わる刑罰を重く受けなければいけない。 それはどの国でも同じだろう。
 それから30年の間に派手な街宣を繰り返した人間は次々に刑務所へ送られていった。 いやいや、、、。
俺たちは店を出た。 「気持ちいいわねえ。」
「お前を抱いてるともっと気持ちいいけど、、、。」 「それってさあ、私がデ、ブ、ってことだよね?」
「そうじゃないよ。 お前を見てると癒されるんだ。」 「ほんとなのかなあ?」
「ほんとだよ。 愛してるんだから。」 「そっか。 愛してるのか。」
 電線にカラスが止まっている。 「おい、あいつらは何なんだ?」
「さあね。 あたしらとは違うみたいよ。」 「仲間じゃないのか?」
「馬鹿ねえ。 あれじゃあ飛べないわよ。」 そんな話をしてるのかなあ?
 それにしてもここ30年の間に代わった物って何だろう? スーパーはまず無くなったな。
代わりにデータサービスの事務所が出来た。 hpで簡単注文できるようになったんだよ。
 そのおかげで困ったのは年寄りたちだった。 兎にも角にもシステムが分かりにくい。
そもそもスマホ自体が機能が多くなり過ぎて敬遠されていたのに、、、。 だからといってパソコンを使うのも面倒くさいし、、、。
 そこで事務所内にタッチパネルを置いた。 ところが今度は目の見えない人たちが騒ぎ始めた。
そうだよなあ、タッチパネルじゃ触ったって何が何だか分からないもんなあ。 それで注文できなかったら餓死するしか無いんだ。
そうなもんだから事務所を置いた会社には朝から真夜中までものすごい数のクレームが届いた。 デジタル電話も24時間鳴りっぱなしだった。
 そんなこんなで苦情は政府にまで及んで国を上げての大騒動になってしまった。
しかもこの事務所は全国に広がっていたからさあ大変。 あっちでこっちで買わせろデモが頻発して混乱しまくり。
おかげで商品を溜め込んでいた倉庫という倉庫が狙われて無料で吐き出すことになってしまった。 ハイテクを過信した連中がやらかす落とし穴に嵌ったんだ。
 そのデモは1年以上続いたっけ。 会社がタッチパネルを全て取り換えるまで騒ぎ隊は騒ぎ続けた。
思うけどさあ、便利になり過ぎると人間は退化するんだよ。 不便なほうがまだまだ進化できたはず。
ネットが全世界に行き渡ってからの人間は退化しまくりだ。 礼儀もモラルも失ってしまった。
こんなんでいいのかね?
 あのお国は口で言うほどの大国じゃなかったんだなあ。 敵国条項を持ち出し、サンフランシスコ講和条約を無効だって騒ぎ立てたはいいけど日本が動かない。
それでもって自衛隊機にロックオンしたら見事なまでにオンゴールを決めてしまった。 情けない国だなあ。
 しかしまあアメリカは何を考えて中国に半導体を売ったんだろう? 儲けが欲しかったのかなあ?
それにしても馬鹿だよね 単に。 儲けることしか考えてないじゃない。
よくもまああれで「俺こそがノーベル平和賞にふさわしい。」なんて吐けたもんだわ。 バーガーに埋もれて昼寝してなさい。
 ウロ戦争だって1年経っても終わらせられなかったじゃないか。 ウクライナはすごいなあ。
あんな頓珍漢を相手にして交渉してたんだからなあ。 俺だったら顔を見ただけで逃げてくるわ。
どっちを向いてるのか分からない平和主義者何て最高に迷惑だよ。 嫌だったらプーチンチンと結婚しなよ。
何か言い出したと思ったらウクライナはどうの、ゲレンスキーはどうのってそれしか無いし。 悔しかったら三日で終戦させてみろ。
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