執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
 

 すると、彼はようやく我に返ったように口を開いた。

「この病院の院長、俺の恩師だった人だから」
「そう……なんだ」

 そのあとは会話が途切れてしまう。居心地が悪い思いをしながら、真太が産婦人科にいた理由に納得する。

 彼は医大生だ。病院に用事があることなんて多々あるだろう。
 どうやって口止めしようか。そんなことを考えていると、「ちょっと外に出ようか」と真太は雫を促してくる。

 確かに病院の玄関で話し込んでいては、患者たちの邪魔になるだろう。
 真太とともに外へと出て、近くにあるカフェへと向かった。

 店内はクーラーが効いていて、とても涼しく快適だ。外の暑さに辟易としていたので、この涼しさはありがたい。
 頼んでいたオレンジジュースを一口飲むと、真太は神妙な顔つきで問いかけてくる。

「雫ちゃん、妊娠しているってことで間違いないよね」

 先程の看護師とのやり取りをすべて見ていたようだ。隠し立てできそうにもないことに落胆する。
 素直に頷いたあと、頭を下げて必死に懇願した。

「お願い、真太くん。幹太くんには、このことを黙っておいてくれないかな」
「え……えぇ?」
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