執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~


 久しぶりに二人に会えて心が躍る一方、もう二度とこの店に来ることはないのだろうと思うとセンチメンタルな気持ちになる。

 美味しい和食に舌鼓を打ったあと、大将たちに挨拶をして車に乗り込む。
 向かう先は港方面だ。異国情緒溢れる公園は二人のお気に入りで、割烹料理店に行ったあとに寄るのが定番になっていた。

 車を駐車場に止めて車から下りると、潮の香りが交じった風が二人を包み込む。
 九月も終わりに近づき、夜は少しだけ過ごしやすくなってきていた。

「ほら、雫」

 幹太は手を差し出してくる。思わず手を伸ばしそうになるのを、途中で止めた。

「雫?」

 いつもならすぐに手を繋ぐのに、それを拒んだ雫を見て幹太は怪訝な表情をする。
 だが、彼はすぐに困ったような表情になり、強引に雫の手を握りしめてきた。

「やっぱり気づかれたか」
「え?」
「今日の俺、少しいつもと違うなぁって思ったから手を繋ぐのを躊躇したんだろう?」
「幹太くん?」
「雫にはやっぱりお見通しだったか」

 幹太はクスクスと笑い、雫と手を繋ぎながら公園へと向かっていく。
 言葉の真意が見えないまま、彼の足は港が一望できる場所へ。
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