執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
幹太と別れることも辛いが、幹太に迷惑をかけてしまうことの方が断然辛い。
小さな箱は今もまだ雫の手の上にある。彼は受け取る気はないという態度を貫いているからだ。
雫が動揺していることを幹太に知られる訳にはいかないのに、所在なさげな箱が微かに震えてしまう。
無理矢理彼にその箱を押しつけ、小さく呟く。
「好きな人ができたの。幹太くんとはこれ以上、一緒にはいられない」
自分の声のはずなのに、違う人が言っているように感じる。
それほど雫にとって現実味がない言葉の数々だからなのだろう。
嘘でもこんなことは言いたくないし、言う未来が来るなんて思ってもいなかった。
居たたまれなくなり、その箱を幹太の手に無理矢理握らせる。
手から箱が消えた瞬間、幹太からの一途な想いを手放したのだという現実を突きつけられたように感じられて胸が苦しくなった。
咄嗟に顔をそらすと、彼は冷静な様子で聞いてくる。
「どんな男なんだ?」
「え?」
「どんな男を好きになった?」
どこか寂しさを滲ませた彼の声を聞いて、胸がズキッと痛んだ。
何度も執拗に聞いてくる彼に対して、雫は口を噤み続けた。