執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
一度唇を動かしてしまったら、嗚咽が漏れてしまいそうだからだ。
彼が納得するような説明をしなければ、この不毛なやり取りは永遠に続いてしまう。
そう判断して色々と言い訳をしたのだけれど、幹太は追及の手を緩める素振りは見せない。
逃げるのも苦しくなってきた雫は、思わず口から出任せを言ってしまった。
「晶子ちゃんから聞いていたでしょう? 図書館で働いているときに告白してくれた人だよ」
幹太に嘘をついた。その事実に押しつぶされそうになる。
もう、彼の顔を見ることはできなかった。
ギュッと目を瞑ってこの時間が早く過ぎることを願っていると、頭上からクスッとどこか楽しげな笑い声が聞こえてきた。
笑う要素なんてどこにあったのか。驚いて彼を見上げると、不敵な笑みを浮かべている幹太と視線が絡んだ。
綺麗な唇が弧を描き、目が細められる。それを見て、なぜだか敗北を感じた。
唇が震えるだけで何も言えないでいると、彼は腰を屈めて顔を覗き込んでくる。
「雫にしつこく付きまとっていた男、最近は雫の前には現れていなかったはずだけど?」