執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
 

 ドキッと心臓が跳ね上がる音がして、ますます平常心ではいられなくなってしまう。
 彼から逃げようとしたのだが、雫の背中は窓に触れた。

 どこにも逃げる場所はない。そんな絶望感に苛まれながら視線を落とすと、彼は雫に覆い被さるように身体を近づけてくる気配を感じる。

 トン、と頭上で音がした。その音が鳴った先を見ると、幹太の男らしい腕が見える。
 恐る恐る顔を真正面に戻すと、すぐそこには幹太の甘いマスクがあった。

 彼は窓に手をつきながら雫に身体を近づけ、腰を少し屈めて顔を覗き込んでくる。
 逃がさない。彼の目と表情、そして身体全体からそんな想いを感じ取った。

 コクンと喉を鳴らしながら、この緊迫した状況をなんとか打破できないかと思いを巡らせる。
 部屋を包み込む静寂がまた雫をより追い詰めていく。それに気がついた雫は、とにかくこの空気を払拭することが先決だと考える。

「えっと、幹太くん……」
「なに?」
「ここはどこ?」

 彼によって追い詰められている理由を聞くのではなく、まずは違う話題を振った方がいいと判断した。
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