執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
 

 ジッと見つめてお願いすると、彼はようやく雫の手を離した。ホッとしながら車から降りると、振り返って幹太にほほ笑みかける。

「じゃあ、いってきます」
「ああ、気をつけて。今日は迎えに来られそうにもないからタクシーを使うんだぞ」
「わかりました」

 素直に頷いてドアを閉めると、車はゆっくりと立ち去っていく。
 その姿を見送ったあと、雫は図書館へと足を向けながらため息を零す。

 こちらが恐縮してしまうほど、ここ最近の彼は気遣いのプロに徹している気がする。
 元々雫のことをよく見ていて、すぐに異変などに気がついてはいた。

 しかし、最近の彼は輪をかけて雫を気遣い、甘やかそうとしてくる。
 とにかく甘い。一挙一動すべてが激甘だ。

 そんな彼を見て最初こそタジタジになっていた雫だったが、諦めの境地に辿り着いたように感じる。

 幹太曰く〝愛の巣〟に連れ込まれてから一週間が経過。

 怒濤の包囲網に搦められ、結局幹太が新たに購入したというタワーマンションに住むことになってしまった。
 逃げ場を失ったというか、奪われたと言っても過言ではないだろう。
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