執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
 

 あとでわかった話だが、その恋人――雫の父は、当時手がけていた事業が成功。地位や名誉、そして多額の金が手に入ったばかりだった。
 すると途端に人が変わり、母を切り捨てたようだ。

 母は途方に暮れながらも一人で雫を産み、育て上げてくれた。感謝してもしきれない。
 母は色々なことを犠牲にしながらも、雫を慈しみ愛してくれていた。
 だからこそ、これからは母を自分が守っていく。雫はそう誓っている。

 涙が頬を伝っていく。だが、その涙を拭うこともせず、ただ映画を熱心に見続けた。

 すっかり魅入ってしまっていたのだろう。場内が明るくなっていることに気づく。
 ハッとして隣を見ると、幹太が優しい眼差しを向けていた。

 慌てて涙を拭おうとすると、彼は雫にハンカチを差し出してくる。

「ありがとう、幹太くん」

 お礼を言って素直にハンカチを受け取ると、今もまだ目尻に残っていた涙を拭いた。
 ようやく心が落ち着き、場内を見渡す。

 すると、すでに人は誰も残っておらず、雫と幹太二人だけになっていた。

「ごめんね、幹太くん。私ったら、映画に没頭しちゃって」
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