執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
 

 かなりの間、心ここにあらず状態だったはずだ。そのことに恥ずかしさを覚えていると、幹太は優しく首を横に振る。

「大丈夫。映画、すごく良かったよな」
「うん」

 幹太の声がとても優しくて、再び目に涙が溢れてきてしまった。

 それに気がついた彼は「雫は昔から感情移入しやすいからな」と苦笑しながら、包み込むように抱きしめてくれる。
 その腕の中がまた優しくて温かくて……。幸せな気持ちになって、また泣いてしまう。

 彼は雫を抱きしめるのを止め、顔を覗き込んで小さく笑った。

「泣き虫、雫」
「ん」
「でも、そこが雫のいいところ」
「幹太くん?」
「主人公の母親と雫のお母さん、敏美さんを重ねたんだろう?」

 やはりお見通しだったようだ。小さく頷くと、幹太は雫の頭をゆっくりと撫でながら「俺も」と言いながら真剣な表情になる。

 すでに何も映っていないスクリーンを見つめながら、彼もまた雫と同じ想いを抱いているのだろう。

 幹太の母である真綾も事情があり、シングルマザーだった時期があるからだ。
 幹太が五歳の頃に真綾は当時の恋人であり、幹太の実父である央太と再会を果たして結婚。その後、真太を授かったのだ。
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