執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
彼はいずれ大企業のトップに君臨する人だ。今後、常に周りの厳しい目に晒されることになるだろう。
それなのに私生児である雫が傍にいていいものだろうか。彼の足を引っ張ってしまわないか。それが不安で堪らない。
こんなことを話せば、幹太は絶対に否定してくるだろう。
だけれど雫の生い立ちが彼の未来に影を落とすことになれば、それが原因で彼との縁が切れてしまうかもしれない。
「どうした? 雫」
「ううん、何でもない。行こうか、幹太くん」
まだ映画の余韻に浸っているのだと解釈してくれたようだ。特にそれ以上は聞かれなかった。
そのことに安堵しながら、先程までの考えを払拭する。
彼の傍にいたいし、誰にも彼を渡したくない。その気持ちは揺るがない。
そんな強い決意の裏側にこっそりと不安を隠しながら、雫は幹太の手を引いて映画館を出た。