執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
「美味しかったね、幹太くん」
「ああ、久しぶりに食ったけど、やっぱり美味いよなぁ」
映画を見終えたあと、学生の頃の行きつけだったもんじゃ焼き店へ行った。
当時の大将は引退してしまっていたが、跡を継いだ息子とも顔なじみだ。
とはいえ、かれこれ十年ほど前のこと。すでに忘れられているかと思っていたが、しっかりと覚えられていた。
「そりゃあ覚えているよ。初々しい高校生のカップルだったしな。それも美男美女。忘れる訳がないよ」とは現大将の言葉だ。
彼に言わせると雫と幹太は甘酸っぱい青春の縮図みたいだったらしく、「見ているこちらが恥ずかしくなるほどだった」と言っていた。
その話を思い出しながら、静かな夜道を幹太と手を繋いで歩く。
街灯の明かりに照らされると、二人の影が長く伸びる。
このまま幹太は雫を実家へと送り届けるつもりなのだろうか。帰りたくない、と言えば、この手を繋いだままでいてくれるだろうか。
先程、幹太のスマホに連絡が入った。急に仕事が入ってしまい、明日午前中に会社へ出向かなければならなくなったらしい。
だから、きっとこのまま彼は雫を実家へと送り届けてくれるつもりだろう。
それがわかっているからこそ、寂しさが込み上げてきてしまう。
大人になるにつれて彼と過ごす時間が少なくなっている。彼とゆっくりと過ごせるのは、また当分先のことになるだろう。
視線を落として、繋がれている手を見つめた。