執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
「お母さんには私が連絡したのに……」
幹太は雫を見下ろすと、首を横に振った。
「いつもなら前もって雫が敏美さんに伝えてくれるけれど、今夜は急に決まったからな。きちんと俺の方から敏美さんに伺いを立てるべきだろう?」
彼は雫のことを大事に想ってくれているからこそ、こうして母に対しても誠意を持って接してくれるのだ。それがとても嬉しい。
彼に手を伸ばし、シャツの裾をちょこんと摘まむ。
「ありがとう、幹太くん」
背の高い彼を見上げると、彼はどこか余裕がなさそうな様子で微かに笑う。
そのあと彼は何も言わずに雫の手を握りしめて歩き出す。
少し早足で大通りまで出てタクシーを拾うと、彼は自宅マンションの住所を告げる。
マンションに着くまでの車内はお互い何も話さず、ただ繋いでいた手を何度も握り返しては熱を抑え続けた。
道路はさほど混雑しておらず、予想より早めにマンションに到着する。
幹太は就職を機に実家を出ており、その頃からこのマンションに住んでいた。
もちろん雫は何度もお邪魔しているけれど、これからのことを考えるとドキドキと鼓動が忙しなくなっていく。