執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~


「お母さんには私が連絡したのに……」

 幹太は雫を見下ろすと、首を横に振った。

「いつもなら前もって雫が敏美さんに伝えてくれるけれど、今夜は急に決まったからな。きちんと俺の方から敏美さんに伺いを立てるべきだろう?」

 彼は雫のことを大事に想ってくれているからこそ、こうして母に対しても誠意を持って接してくれるのだ。それがとても嬉しい。
 彼に手を伸ばし、シャツの裾をちょこんと摘まむ。

「ありがとう、幹太くん」

 背の高い彼を見上げると、彼はどこか余裕がなさそうな様子で微かに笑う。
 そのあと彼は何も言わずに雫の手を握りしめて歩き出す。

 少し早足で大通りまで出てタクシーを拾うと、彼は自宅マンションの住所を告げる。
 マンションに着くまでの車内はお互い何も話さず、ただ繋いでいた手を何度も握り返しては熱を抑え続けた。

 道路はさほど混雑しておらず、予想より早めにマンションに到着する。

 幹太は就職を機に実家を出ており、その頃からこのマンションに住んでいた。
 もちろん雫は何度もお邪魔しているけれど、これからのことを考えるとドキドキと鼓動が忙しなくなっていく。
< 26 / 158 >

この作品をシェア

pagetop