執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
慌てた様子でほほ笑んだが、どこか固さは残っていた。
「おかえり、雫」
「ただいま、お母さん。一体どうしたの?」
母の顔が歪む。電話で誰かと口論していたことを雫に聞かれたくはなかったのだろう。
小さくため息をついたあと、母は困ったように眉尻を下げる。
「実はね、大槻――雫の父親から電話があったの」
「え?」
どうやら母の元恋人であり、雫の実父が母のスマホに電話をかけてきたようだ。
驚いて目を見開いていると、母は再び息をつく。
「別れてから今まで一度も電話なんてかけてこなかったのに……」
母は唇を噛みしめる。苛立ちが隠せない様子だ。
母にソファーへ座るように勧めたあと、雫もその隣に腰を下ろす。
「ずっと連絡はなかったの?」
「ええ。私と雫を捨てた男よ? 私たちのことを気にかけて電話なんてしてくるはずがない」
吐き捨てるように言ったあと、母は不安げな様子で背中を丸める。
その姿がとても小さく見え、心配になって母に抱きついた。
すると母は困ったようにほほ笑んだあと、雫の肩にポンポンと優しく触れてくる。
「ごめんね、雫。心配をかけてしまって」
「ううん」