執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
首を横に振ると、母は雫の手をギュッと握りしめてきた。
「あの男……、大槻は今になって雫に会いたいなんて言い出したわ」
「え?」
今までそんな連絡が大槻から来たことはない。初めてだろう。
怪訝に思って顔を歪めた雫を見て、母も困惑気味だ。
「おかしいと思うわよね……。だって、今まで何の連絡もなかったんだもの」
「うん」
雫にとって大槻という男は母の敵であり、雫の敵だ。
妊娠した母を捨てた人間であり、母を悲しませた男である。
絶対に許せないし、実父だとは思わないようにしていた。
雫と大槻は血の繋がりがあるのは事実だが、大槻はそれを認めていないし、雫のことを認知していないのが現状だ。
雫と大槻は顔を合わせたことは、今までに一度もない。
ずっとそういうスタンスでいたはずの大槻が、なぜ今頃になって連絡をして来たのか。
それも雫に会いたいなどと言い出した理由がわからない。だからこそ、不気味に感じてしまう。
母の話を聞く限り、大槻が会いたがっているのは母ではなく雫だけらしい。
何か意図があるのだろうけれど、それが見えてこない。