執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
 

 大槻の印象は、母から聞いていた。その人物像と重なる。

 ――この人が、私のお父さん……なの?

 頭の中で警戒音が鳴り響く。浮かべた笑顔をなんとか保ちながらも、内心では怯えてしまう。
 男性はどこか低姿勢で、媚びを売るように笑顔を見せてきた。だが、その表情は雫に恐怖心を植え付けてくる。

 様子からして図書館の利用客ではない。そんな確信を持っていると、目の前の男性が口を開きかけた。
 すると、正面玄関の自動ドアから入ってきたのだろう。背後から声がする。

「彼女に何か? 用件でしたら、俺が聞きますが」

 慌てて振り返ると、険しい表情をした幹太が早足でこちらにやって来た。
 どうしてここに幹太がいるのだろうか。驚きのあまり目を見開いていると、彼が雫の隣へとやって来て肩を抱いてくる。

 すると、緊張で強ばっていた身体から力が抜け、安堵している自分に気がついた。

 幹太が怒りを滲ませていると、その男性はばつが悪そうに図書館を出て行く。
 その後ろ姿を見てホッと息をついていると、幹太が雫の腰を抱いて近くにあるソファーに座らせてくれた。
< 51 / 158 >

この作品をシェア

pagetop