執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~


 彼はその場にしゃがみ込み、心配そうな眼差しを雫へと向けてくる。

「大丈夫か、雫」
「う、うん」

 ぎこちなく返事をすると、膝の上に置いていた手に彼が手を伸ばしてきた。

 彼が両手で優しく包み込んでくれ、少し震えていた指先にぬくもりを感じる。
 彼の体温が伝わってくると震えが止まり、ホッと息を吐き出した。

 幹太を見つめると、彼は依然として厳しい表情のままだ。
 彼は掴んでいた雫の手をギュッと握りしめると、強ばった声で聞いてくる。

「もしかして、あの男に交際を迫られているのか?」

 晶子がバラしてしまったのだろう。雫が最近利用客に口説かれていることを、彼は知ってしまったようだ。

 ――晶子ちゃん! 言わない約束だったよね?

 心の中で叫ぶと、脳裏に晶子の顔が浮かぶ。

「だって心配だったんだから仕方がないでしょ!」

 そんなふうに言い、腰に手を当てながら反対に叱ってきそうだ。容易に想像できて肩を竦める。
 あれこれ考えている雫を見て、幹太はより眉間に深い皺を刻んだ。

「雫」
「は、はいっ」

 鋭さを増した目を向けられて、慌ててしまう。雫は首を横に振り、彼の言葉を否定した。
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