執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
「違うよ。あの人じゃない!」
「へぇ……」
「あ……!」
口が滑ってしまった。そのことに気がついて、咄嗟に視線を彼からそらす。
これでは男性に交際を迫られていると白状したのも同じだ。その上、どうやら幹太は勘違いをしてしまったようで頬が引き攣っている。
「他にも雫を狙っている男がいるってことか?」
ますます表情が怖くなる幹太に必死になって首を左右に振った。
「違う! 一人だけだよ」
「一人だけでも大問題だ!」
顔を歪める幹太を見て、雫は小さく縮こまる。全くその通りだ。
気まずくなって視線を泳がせていると、目の前の幹太は項垂れながら盛大にため息をついた。
かなり怒っているのだろう。長年の付き合いだからこそわかる。
とにかく今は謝るしかないと腹をくくった。
「ごめんなさい」
消えそうな声で呟きながら、肩を落とす。
幹太はただ怒っているだけではない。雫のことを心配しているからこそ、怒りが収まらないのだ。
雫が危険に晒される可能性があるのに、それを知らなかった。その事実が幹太を苦しめているのかもしれない。