執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
隣に座る幹太に向き直り「違うかもしれなけれど」と前置きをしたあとに、雫の心に渦巻いている考えを伝えた。
「幹太くん。あのね、さっきの人……。もしかして、私のお父さんかもしれない」
驚いた様子で目を見開く幹太を見て、雫は昨日母にかかってきた電話の件を話す。
母が感情的になって口論になっていたと告げると、「マジか……」と呟いてそのあとは口を閉ざしてしまった。
母は穏やかな人で、人と口論になるなんてところは見たことがない。そのことを幹太も知っているからだろう。
前屈みになって指を組み、彼は考え込む仕草をした。少しの沈黙のあと、彼は顔を上げて雫を見つめてくる。
「事情は把握した。俺の方でも探りを入れておく。だが、雫は今以上に気をつけてほしい」
真剣な表情で訴えかけられ、雫は大きく頷いた。
先程の男性が大槻だった場合、どうして今頃になって雫に会いに来たのか。その辺りが読めないので、とにかく不気味に感じる。
幹太と母が言うように、用心するに越したことはないだろう。
それに、これ以上幹太に迷惑をかけるようなまねはしたくない。