執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
彼はとにかく忙しい人だ。こんな時間に会社を抜け出てくるような余裕はないはず。
それなのに雫のことを心配して、こうして顔を見せてくれたのだろう。彼の優しさが胸に浸む。
「幹太くん、ごめんね」
「雫?」
「ごめんなさい」
幹太に心配をかけたくなくて、男性に交際を迫られている件を伝えなかった。
迷惑をかけたくないという一心で話さなかったのだが、結局迷惑をかけている。この状況が居たたまれなくなってしまう。
もっと早くにこの件を幹太に伝えていれば、何か対処ができたかもしれない。
こんなふうに忙しい合間を縫って、雫の下に駆けつけなくてもよかったかもしれないのだ。
幹太に迷惑をかけてしまったことに申し訳なさが募っていく。
すると、幹太は何も言わずに頭を撫でてくれた。
その手つきがとても優しくて、涙が出てきそうになる。
幹太はポンポンと労るように背中に触れてきた。
「雫のことを心配するのは、俺の特権だぞ」
「え?」
「遠慮なんていらない。もっと俺のことを頼れ」
彼は目元を柔らかく綻ばせたあと、「わかったか?」と聞いてくる。
幹太の声がとても優しくて、鼻の奥がツンとして痛くなった。