執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
「悪い、雫。そろそろ戻らないといけない」
時間がない中で無理をしてここにやって来たのだろう。申し訳なくて眉尻を下げると、困ったように彼は笑った。
「そんな顔するな。俺は雫の笑顔が好きなんだから」
急いで立ち上がり、正面玄関を出て行こうとする彼に雫もついていく。
館内を出ると、一人の女性が傘をさして立っていた。
「永江さん、急がないと会議の時間に間に合いません」
「あぁ。悪い、佐合。急ごうか」
幹太は、その女性が差し出してきた傘を受け取る。
二人の会話を聞いている限り、幹太の秘書のようだが彼女の顔は初めて見る。
幹太の秘書は水埜という男性だと記憶していたのだが、変わったのだろうか。
綺麗な女性で、仕事がデキるように見える。幹太と並んでも遜色ない様子を見て、胸の奥がジリジリと焼けるように痛む。
幹太は傘を広げると、雫を振り返った。
「じゃあ、雫。また今夜電話する」
「うん」
「絶対に一人で行動しないこと。いいな? 約束しろよ?」
「うん、わかっているよ」
これ以上彼に心配はかけたくはない。深く頷くと、彼は後ろ髪引かれるような様子で車へと乗り込んで行く。