執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
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「井熊さん、最近変な男が来なくなったみたいだね。よかったよ」
「はい。ご心配をおかけしました」

 バックヤードで本の修理をしていると、館長に声をかけられた。
 雫は腰を上げて頭を下げると、彼は何度か頷いたあとにこやかな表情で去って行く。

 そんな館長の姿を目で追いながら、大槻が接触してきた日から今日までを思い出す。

 あのあとも、大槻は何度も母に電話をかけてきていた。
 そこで判明したのは、あの日図書館で雫に声をかけてきた人物は大槻だったということだ。本人が電話で白状したので間違いない。

 あのあと図書館のスタッフにも事情を話し、基本バックヤード勤務にしてもらった。そのため、大槻との接触はなくなったのだが……。

 それでも大槻は何度も図書館に通っていたらしく、『図書館で雫に会えないから、時間を作ってほしい』と母にお願いをしてきた。

 もちろん母は怒り心頭で「雫に近づくな!」と大槻に言ったのだが、彼は聞く耳を持たず何度も電話をかけてきては懇願し続けていたのだ。

 ほとほと困っていたのだが、急にその電話がピタリと止まった。
 母と一緒に胸を撫で下ろしたのだが、どうやらそれは幹太のおかげだったらしい。

 弁護士である幹太の父、央太とともに、大槻に探りを入れていたようだ。
 それに気がついた大槻は、下手に動かない方がいいと判断したのではないか。そんなふうに幹太は言っていた。

 幹太たちの調べによると、大槻は投資に失敗をして多額の借金を作ってしまったらしい。

 そこで大槻は自分の会社を他人に譲り、借金は帳消しになったようだ。しかし、新たに借金を作ってしまったらしい。
 だが返済する当てはなく、娘である雫に借金の肩代わりをお願いしようと近づいてきたのではないか。
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