執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~
 

 しかし夕方のラッシュ時間に嵌まってしまい、思ったより到着が遅くなってしまった。
 逸る気持ちを抑えながら支払いを済ませ、すぐさまマンションへと入っていく。

 オートロックのインターホンに彼の部屋番号をプッシュする。すると、少し経ってから男性の声が聞こえた。

『どちら様でしょうか?』
「私、井熊と言いますが」
『雫さんですか!』
「は、はい。幹太さんが倒れたと聞いて――」

 最後まで言う前にその男性は『どうぞ上がってきてください』と言ってロックを解除してくれた。

 幹太が眠っていたりしたら、入れてもらえないところだったと今更ながらに気がつく。
 そこまで考えが及ばないほど慌てていたということだろう。

 先程の声は恐らく幹太の秘書である水埜だろう。彼が居てくれてよかったと胸を撫で下ろす。

 水埜とは面識があるとはいえ、ほとんど話したことはない。

 幹太が「俺の秘書をしてくれている水埜さん。で、こちらは俺の最愛の人」と言っただけで、お互いが挨拶をする機会を与えられなかったのだ。
< 80 / 158 >

この作品をシェア

pagetop