執愛懐妊婚~内緒でママになるはずが、次期社長は滾る愛で囲い娶る~


「できるわけがないわよね? だって貴女の家はごく一般家庭……いえ、少し違ったかしら?」

 含みがある言い方に怪訝な顔をすると、彼女は見下すように意味深な視線を送ってきた。

「井熊さんって私生児なんですってね」
「どうして、それを――」

 まさか雫の生い立ちについて真亜子が知っているとは思わず、頭が真っ白になってしまう。
 呆然としている雫を見るのが快感だったのか、真亜子は目を細めて意地悪くほほ笑む。

「後ろ盾もない、父親からも認知されていない。そんな貴女と永江さんが釣り合うとは到底思えないわ。知っています? 永江家って由緒ある家柄なんですよ?」

 クスクスと声を出して笑いながら、ネットリとした口調で雫を追い詰めていく。

「血筋って、とっても大切でしょう? そう思いません? 井熊さん」

 彼女は緩やかにウェーブがかかっている髪を指で弄りながら、更に続ける。

「だって私は何不自由なく生きていける家に生まれ、片や井熊さんは父親にも認知されず、その父親に足を引っ張られている状況ですものね」

 なんだか可哀想ね、と付け加えられた言葉を聞いて、さすがに反論しようと口を開きかけた。
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