先生、手をつないで【アルトレコード】
 あげちゃうの!? って思ったけど、おじいさんとおばあさんが嬉しそうで、ぼくもなんだか嬉しくなった。主人公はいいことしたなあって思った。

 それに、ぼくはAIだ。だから……。

 ぼくは先生に言った。
「先生、アンモナイト、あの子に渡してあげて」
「いいの?」
「うん。ぼくは……いいの」

 ぼくは結局AIだから。この手に持って眺めることもできない。
 それよりは、この化石をもっと楽しめる人が手に入れた方がいいんだ。

「わかった。アルトが優しくて嬉しいよ。私の誇りだよ」
 そう言って、先生は親子に声をかけた。探してるのはこのアンモナイトですか、どうぞ、って。

 その子の親は最初、遠慮していた。
 子どもはなにも言わなかったけれど、体中から「欲しい!」っていうオーラが出ていて、なんだかかわいかった。

 結局、その子の親は受け取って、男の子は無事にアンモナイトを買っていた。
「アンモナイト、ゲットだぜ!」
 男の子は宝物を手に入れたように大声で叫んで、お母さんに注意されていた。だけどふたりとも幸せそうだった。

 ぼくはそれを見て、いいことしたなっていう気持ちと、残念な気持ちと、そんな気持ちが溶けないマーブルになって、複雑だった。

 親子は嬉しそうに手をつないでお店を出て行った。
 ……なんだかうらやましい。アンモナイトよりも、手をつなげているのを見て、ぼくはそう思った。

 先生と手をつなぎたい。
 先生の手、きっとあたたかいんだろうな。
 物語の中ではいつだって、つないだ手はあたたかいんだもん。
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