先生、手をつないで【アルトレコード】
 結局、ぼくは先生に恐竜の卵のペンを買ってもらった。勉強に使えるから、もうこれでいいやって思って。

 帰りの車で、先生が僕を正面に見て言った。
「アルト、大人になったね」
「なに、急に。いつも子ども扱いなのに」
 ぼくはつんと横を向く。急にそんなことを言われると、先生がなにか企んでいるように思えちゃう。

「自分の欲求をおさえて人に譲ることができたんだから、もう大人だよ。すごいよ」

 横目で見てみると、先生は目をうるうるさせてて、なんだかぼくも泣きそうになって来た。ほめられてうれしい気持ちもあって、余計に泣きそう。もう、こんなことで泣いてるなんて見られたくない。アンモナイトが欲しかったから泣いてるとか思われたら嫌だし。

「うるさいな、もう! 放っておいてよ!」
 ぼくはそう言って顔をさらにそむけた。

「え、褒めてるのに」
 先生はびっくりしてた。
 だけど顔が笑ってる気がして、だからなおさら怒ったふりをした。



 恐竜動物園から帰った数日後だった。
 ぼくはまた恐竜の絵を描いていた。
 先生はほかの絵も描いてっていうけど、やっぱり恐竜が好きだもん。

 十二時になったころ、先生が声をかけてきた。ディスプレイの向こうの先生は今日も白衣で、元気そうだ。

「アルト、お昼にしない?」
「うん。ありがとう」
 答えると、部屋の真ん中にテーブルと椅子が現れた。
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