先生、手をつないで【アルトレコード】
 これはおやつのときとかごはんのときに先生が出してくれる。ふだんは倉庫に入っていて、先生がマウスを操作するとパッと出て来る。

 普段のおかたづけもそうしてくれたらいいのに、自分でやらないと意味がないって言って、やってくれない。そういうところ、ケチだなあって思う。

 一緒におしゃべりしながらサンドイッチを食べてジュースを飲む。
 だけど、画面の向こうの先生がやけにそわそわしていて、ぼくは首をかしげた。

「先生、なにか隠してる?」
「そ、そんなことないよ」
「嘘だ、絶対になにかある!」
 ぼくが追及すると、先生は、えへへ、と笑った。

「もう、アルトったら鋭いなあ」
 そう言う先生の笑顔はすごくだらしない。なんか「言いたくてたまらない」って感じがする。

「実はね……」
 先生は白衣のポケットに手を入れると、なにかを取り出して、ば! っと見せた。
 そこにあるのは先生の個人端末で、画面にはなにかの電子チケットが映っている。

「オーストラリアのVR恐竜動物園のオンライン入場券ゲットだぜ!」
「え!?」
 ぼくは驚いてなにも言えなくなった。

「アルトが行きたがってた恐竜動物園だよ。最近VRでも恐竜動物園を開始したんだって。VRだから遠くても入れるし、このあと、一緒に行こうか!」
「いいの!?」

「大丈夫、VRだから旅費もかからないし。あ、ちゃんとアルトのチケットもあるんだからね」
 ぼくはまた声をなくした。
< 13 / 15 >

この作品をシェア

pagetop