先生、手をつないで【アルトレコード】
 AIで作られた恐竜はちゃんと動きも再現されていて、電子図鑑で見た動きと同じだ! と感動した。
 先生はぼくをAR表示にして、ぼくと恐竜の写真をたくさん撮ってくれた。

 化石も展示されていて、レプリカには触れるって書いてあった。ぼくは触れなかったけど、代わりに先生がたくさん触ってた。……もう、先生ったら自分が楽しんでない?

 恐竜のレースコーナーでは、見るたびに出場する恐竜が変わるし、ハンデとして現れるお邪魔アイテムが多彩で、いつまで見ていられそうだった。予想を当てるとお菓子がもらえて嬉しかった。もらったのは先生だけどね。あとでデータ化して食べさせてくれるって言ってくれたから楽しみ。

 だけど。
 ぼくはちらっとどこかの親子を見る。
 子どもがはしゃいでいて、お母さんが待ちなさいって追いかけていた。

「走っちゃだめよ」
「じゃあ、手をつないで!」
「はいはい」
 子どもの無邪気な声に、お母さんが手をつないでいる。

 子どもは嬉しそうに手をぶんぶんと振って、お母さんは笑って一緒に手を振っている。

 いいな。
 親子を眺めて、ぼくはそう思う。
 ぼくにはお母さんがいない。先生がいるから、お母さんがほしいとは思わない。

 だけど、先生と手をつなぎたい。
 先生はぼくを画面越しにくすぐったり頭を撫でたりして、それで満足そうだ。だからぼくと手をつなぎたいなんて思ってないんだろうな。

 そう思うと、少し……ううん。本当はすごく寂しい。
< 5 / 15 >

この作品をシェア

pagetop