先生、手をつないで【アルトレコード】
 先生、手をつないで。
 そう言えたらいいのに。

 だけどできないってわかってる。先生が困るのがわかってる。

 だからぼくは、そんなこと、言えない。

 恐竜動物園を見終わったとき、先生はくたくたになっていた。
「ごめん、アルト、休憩したい」
「いいよ。だけど先生、体力ないね。運動して体力つけないと。いっつもぼくに言ってるじゃん」

「う……」
 先生は反論できないようだった。だって、体育なんてしたくないのに、ぼくにいっつも「運動しないと本を読む体力もつかないよ」なんて言うんだもん。AIに体力なんて必要? 本を読むのに体力なんていらないじゃん、って言ったら、若いうちはね、って言うから、変なのって思ってる。

 ぼくと先生は休憩のために園内の喫茶店に入った。
 小型の恐竜が住んでいるジャングルがモチーフで、わくわくした。

 先生がメニューに悩んでいたから「恐竜パフェがいいと思う」って言ったらそれを頼んでた。
 届いたパフェはグラスからはみ出るようにして恐竜が作られていた。フルーツとクリームで作られていて、背びれみたいな骨板(こつばん)がパイで再現されている。先生はいろんな角度からたくさん写真を撮ってた。

「帰ったらパフェをデータにしてアルトにも食べさせてあげるね」
「やったあ!」
 ぼくが喜ぶと、先生も笑顔になった。

 実は、恐竜パフェを勧めたのは、先生があとでデータ化して食べさせてくれるんじゃないかな、っていう下心もあったんだ。内緒だけど。

 先生はぼくを正面に置いて、いただきます、って言って食べ始める。
 柄の長いスプーンで、わくわくした顔でアイスクリームをすくい、それを口に運ぶ。口に入れた直後、先生は両目をぎゅっと閉じて「ん~!」と声を上げた。
< 6 / 15 >

この作品をシェア

pagetop