先生、手をつないで【アルトレコード】
「そんなの、なにをどう選んでいいのかわからないよ」
「じゃあ予算は千円で」
「千円ね、わかった」
 ぼくが答えると、先生はぼくの入った端末をあちこちに向ける。

 だけど千円で買えそうなのはお菓子ばっかりだ。 恐竜のポストカードやクリアファイルも予算内だけど、欲しいとは思えない。

 欲しいのは、恐竜のホログラム投影機とか恐竜のぬいぐるみとか3Dパズルとか。
恐竜育成ゲームもいいな。そのゲームは草食恐竜の牧場経営みたいな感じ。肉食恐竜が襲って来るのを防いで恐竜を増やして売ったり、品評会があったりする。やってみたい。でも、ここでなくても買えるからって言われそう。どうせ買ってくれないのに。

 一番欲しいのは化石なんだけど、さっき一緒に見た化石コーナーは、かけらみたいな古代のサメの歯でも何千円もして、高い化石だと何万円もして、買ってもらえなさそうだ。

「……ぼくが欲しいの、なんにも買えない」
 ガッカリして言うと、先生は慌てて近くにあったペンを手に取る。

「このペンとかどう? 先っぽに恐竜の卵があって、ボタンを押すと芯が出ると同時に恐竜が現れるよ」
「そんな子どもっぽいの嫌」
 カラフルな恐竜がついてて、子どもだましだ。先生、ぜんぜんぼくのことわかってない。もっとリアルなすごいやつがほしいのに。ぬいぐるみならかわいくてもいいけど。

「ぼく、やっぱり化石がほしい……。それが買えないならなんにもいらない」
「化石かあ」
 先生はつぶやく。

 きょろきょろした先生は、少し先になにかを見つけたようだった。
 先生が歩いて行くと、商品の棚に隠れるように、ワゴンコーナーがあった。
< 8 / 15 >

この作品をシェア

pagetop