その抱擁は、まだ知らない愛のかたち
麻里子のマンション前で、タクシーが静かに止まった。
車を降りた麻里子は、深く頭を下げた。
「今日は……本当にありがとうございました。おやすみなさい」
そう言ってエントランスへ向かおうとした瞬間、後ろからそっと腕を掴まれる。
「部屋まで送る。……足元、ふらついてる」
静かな声でそう言うと、貴之は自然な仕草で麻里子の肩を抱いた。
その温もりが、酔いよりもずっと強く、麻里子の胸に広がっていく。
エレベーターを降り、バッグの中から鍵を探す麻里子の手が震えていた。
やっと見つけた鍵を取り出したその瞬間、指先から滑り落ちる。
「ごめんなさい……」
しゃがみこもうとした麻里子より先に、貴之がすっと手を伸ばして拾い上げた。
そのまま鍵を差し込み、扉を開ける。
「支えるよ」
そう一言だけ告げて、麻里子の腰に手を添えながら玄関へ一緒に入る。
扉が静かに閉まり、二人きりの夜が始まった。
次の瞬間、貴之の腕が麻里子の腰をしっかりと抱き寄せた。
そして、唇がそっと麻里子の唇に触れる。
ゆっくりと、優しく。
言葉よりも深く、想いを込めて、何度も何度も――繰り返す。
麻里子の瞳から、ぽろりと涙がこぼれ落ちた。
「……どうして……?」
震える声でそう尋ねた麻里子に、貴之は静かに答えた。
「愛してるんだ。どうしようもないくらい、麻里子のことが……」
その言葉に、麻里子の理性が音もなく崩れていく。
心に鍵をかけていた想いがあふれ、気づけば腕が貴之の首にまわっていた。
「……もっと……」
掠れる声でねだるように言いながら、麻里子は貴之のキスをすべて受け入れた。
それを合図に、貴之は麻里子の身体を軽々と抱き上げた。
ふたりだけの静寂のなか、足音だけを残して寝室へと向かう。
その夜、貴之はいつになく優しかった。
一つひとつの仕草が、麻里子を大切に包み込むようだった。
指先も、唇も、吐息も、すべてが慈しみのかたちをしていた。
「愛してる……麻里子……」
何度も何度も、耳元にささやかれる愛の言葉。
麻里子はその甘美な響きに身を委ね、ただ深く、彼に抱かれていった。
やがて、眠りに落ちた麻里子の静かな寝息を確認すると、
貴之はそっとベッドを離れた。
寝室のドアを閉め、玄関の鍵を静かに戻してから、夜の街へと歩き出した。
まるで――何もなかったかのように。
車を降りた麻里子は、深く頭を下げた。
「今日は……本当にありがとうございました。おやすみなさい」
そう言ってエントランスへ向かおうとした瞬間、後ろからそっと腕を掴まれる。
「部屋まで送る。……足元、ふらついてる」
静かな声でそう言うと、貴之は自然な仕草で麻里子の肩を抱いた。
その温もりが、酔いよりもずっと強く、麻里子の胸に広がっていく。
エレベーターを降り、バッグの中から鍵を探す麻里子の手が震えていた。
やっと見つけた鍵を取り出したその瞬間、指先から滑り落ちる。
「ごめんなさい……」
しゃがみこもうとした麻里子より先に、貴之がすっと手を伸ばして拾い上げた。
そのまま鍵を差し込み、扉を開ける。
「支えるよ」
そう一言だけ告げて、麻里子の腰に手を添えながら玄関へ一緒に入る。
扉が静かに閉まり、二人きりの夜が始まった。
次の瞬間、貴之の腕が麻里子の腰をしっかりと抱き寄せた。
そして、唇がそっと麻里子の唇に触れる。
ゆっくりと、優しく。
言葉よりも深く、想いを込めて、何度も何度も――繰り返す。
麻里子の瞳から、ぽろりと涙がこぼれ落ちた。
「……どうして……?」
震える声でそう尋ねた麻里子に、貴之は静かに答えた。
「愛してるんだ。どうしようもないくらい、麻里子のことが……」
その言葉に、麻里子の理性が音もなく崩れていく。
心に鍵をかけていた想いがあふれ、気づけば腕が貴之の首にまわっていた。
「……もっと……」
掠れる声でねだるように言いながら、麻里子は貴之のキスをすべて受け入れた。
それを合図に、貴之は麻里子の身体を軽々と抱き上げた。
ふたりだけの静寂のなか、足音だけを残して寝室へと向かう。
その夜、貴之はいつになく優しかった。
一つひとつの仕草が、麻里子を大切に包み込むようだった。
指先も、唇も、吐息も、すべてが慈しみのかたちをしていた。
「愛してる……麻里子……」
何度も何度も、耳元にささやかれる愛の言葉。
麻里子はその甘美な響きに身を委ね、ただ深く、彼に抱かれていった。
やがて、眠りに落ちた麻里子の静かな寝息を確認すると、
貴之はそっとベッドを離れた。
寝室のドアを閉め、玄関の鍵を静かに戻してから、夜の街へと歩き出した。
まるで――何もなかったかのように。