その抱擁は、まだ知らない愛のかたち
「貴之さん、昨日は片づけを全部させてしまって……ごめんなさい」
麻里子が小さな声で言うと、貴之は湯飲みを置き、穏やかに返した。
「皿洗いくらい、俺にもできるからな」
その言葉に、少し安心しながらも、麻里子は言いよどんだ。
「あの……えっと……」
「ん? なんだ?」
「……起きたら、タンクトップを着ていなかったんですが……」
「あぁ、そこか」
貴之は、ほんの少し口元を緩めて言った。
「俺が脱がせた。水を飲んでるとき、こぼしちゃってな。タンクトップが濡れてしまったんだ」
「……うわぁ、恥ずかしい……」
麻里子は思わず顔を覆い、頭を下げた。
「醜態をさらして……すみません……」
「醜態?」
貴之は目を細め、ゆっくりと首を振る。
「まさか。あれは……最高に魅力的だったよ。すべてを攫いたいくらいに」
「……っえ?」
言葉が飲み込めずに、麻里子は固まった。
すると貴之は、そっと手を伸ばしながら囁いた。
「水を欲しがってた麻里子に、俺が口移しで何度も飲ませたんだ。……そのたび、少しずつ水が溢れてな。顎に、首に、鎖骨に……」
言いながら、指先が麻里子の肌をなぞるように触れる。
そして、谷間で、止まった。
「……ここに、流れて。濡れてしまったから、脱がせた。そういうことだ」
貴之の指が触れている場所が、じわりと熱を帯びる。
欲情のこもった視線に、麻里子の心臓は跳ね上がった。
「……もっと、知りたいか?」
答えられない麻里子の沈黙を肯定と受け取ったのか、貴之はそっと彼女のタンクトップをまくり上げた。
耳元に、熱い吐息がふっとかかる。
「……っ、あっ……」
背筋がぞくりと震える。
左手が髪に滑り込み、優しく撫でられる。
続いて、耳に触れる甘いキス。
その手が、首筋から肩へ、そして左胸、腰へとゆっくり滑り下りていく。
どうしていいかわからない。
でも、貴之の手のひらが触れるたび、気持ちよくて、心がほどけていく。
もっと……もっと……と、心の中で無意識に求めていた。
「麻里子、可愛い……」
貴之は再び耳元に熱い吐息を吹きかけ、彼女をそっと押し倒す。
唇が、肌をひとつずつ確かめるように撫でていく。
優しく、深く。
外されないのブラの奥—
布越しに、谷間に貴之の唇と指先が触れるたびに、麻里子の体は熱を帯び、甘い声が漏れた。
「……んっ……ぁ……っ」
背中がしなる。
意識がとろけそうになる。
そんな麻里子を、貴之はじっと見つめてから、耳元でそっと囁いた。
「麻里子……綺麗だよ。愛してる」
その言葉が、胸の奥まで染み込んでいく。
涙が出そうになるほど、心が震えていた。
しばらくして、貴之が上体を起こし、そっと麻里子を抱き上げる。
「これだけだ。あとは……何もしてない」
麻里子は顔を真っ赤に染め、貴之の胸に顔をうずめた。
貴之は、まくり上げていたタンクトップを優しく引き下ろす。
「……麻里子、買い出しにはいつ行くんだ?」
「え? あ、11時くらい、かな……」
「わかった。じゃあ車で行こう。重いものとか、大きいのも買えるだろ。俺んとこのエントランスで待ち合わせな」
「……うん」
「朝食、ごちそうさま。……じゃあ、俺は一度、家に戻る」
貴之が玄関へ向かうその背中が見えなくなった瞬間、麻里子はぽつりとつぶやいた。
「……なんか、寂しい」
さっきまでの熱い時間。
まるで、夢みたいだった。
ラノベの中の世界に迷い込んだみたいな朝。
けれど、確かに触れられたぬくもりが、今も体の奥でじんわりと広がっていた。
「……溺愛って、こういうことなの?」
胸の奥から、ふわりと再び熱が湧き上がる。
麻里子はその気配を振り払うように、掃除道具を手に取った。
—今日は、いい一日にしよう。そう、思いながら。
麻里子が小さな声で言うと、貴之は湯飲みを置き、穏やかに返した。
「皿洗いくらい、俺にもできるからな」
その言葉に、少し安心しながらも、麻里子は言いよどんだ。
「あの……えっと……」
「ん? なんだ?」
「……起きたら、タンクトップを着ていなかったんですが……」
「あぁ、そこか」
貴之は、ほんの少し口元を緩めて言った。
「俺が脱がせた。水を飲んでるとき、こぼしちゃってな。タンクトップが濡れてしまったんだ」
「……うわぁ、恥ずかしい……」
麻里子は思わず顔を覆い、頭を下げた。
「醜態をさらして……すみません……」
「醜態?」
貴之は目を細め、ゆっくりと首を振る。
「まさか。あれは……最高に魅力的だったよ。すべてを攫いたいくらいに」
「……っえ?」
言葉が飲み込めずに、麻里子は固まった。
すると貴之は、そっと手を伸ばしながら囁いた。
「水を欲しがってた麻里子に、俺が口移しで何度も飲ませたんだ。……そのたび、少しずつ水が溢れてな。顎に、首に、鎖骨に……」
言いながら、指先が麻里子の肌をなぞるように触れる。
そして、谷間で、止まった。
「……ここに、流れて。濡れてしまったから、脱がせた。そういうことだ」
貴之の指が触れている場所が、じわりと熱を帯びる。
欲情のこもった視線に、麻里子の心臓は跳ね上がった。
「……もっと、知りたいか?」
答えられない麻里子の沈黙を肯定と受け取ったのか、貴之はそっと彼女のタンクトップをまくり上げた。
耳元に、熱い吐息がふっとかかる。
「……っ、あっ……」
背筋がぞくりと震える。
左手が髪に滑り込み、優しく撫でられる。
続いて、耳に触れる甘いキス。
その手が、首筋から肩へ、そして左胸、腰へとゆっくり滑り下りていく。
どうしていいかわからない。
でも、貴之の手のひらが触れるたび、気持ちよくて、心がほどけていく。
もっと……もっと……と、心の中で無意識に求めていた。
「麻里子、可愛い……」
貴之は再び耳元に熱い吐息を吹きかけ、彼女をそっと押し倒す。
唇が、肌をひとつずつ確かめるように撫でていく。
優しく、深く。
外されないのブラの奥—
布越しに、谷間に貴之の唇と指先が触れるたびに、麻里子の体は熱を帯び、甘い声が漏れた。
「……んっ……ぁ……っ」
背中がしなる。
意識がとろけそうになる。
そんな麻里子を、貴之はじっと見つめてから、耳元でそっと囁いた。
「麻里子……綺麗だよ。愛してる」
その言葉が、胸の奥まで染み込んでいく。
涙が出そうになるほど、心が震えていた。
しばらくして、貴之が上体を起こし、そっと麻里子を抱き上げる。
「これだけだ。あとは……何もしてない」
麻里子は顔を真っ赤に染め、貴之の胸に顔をうずめた。
貴之は、まくり上げていたタンクトップを優しく引き下ろす。
「……麻里子、買い出しにはいつ行くんだ?」
「え? あ、11時くらい、かな……」
「わかった。じゃあ車で行こう。重いものとか、大きいのも買えるだろ。俺んとこのエントランスで待ち合わせな」
「……うん」
「朝食、ごちそうさま。……じゃあ、俺は一度、家に戻る」
貴之が玄関へ向かうその背中が見えなくなった瞬間、麻里子はぽつりとつぶやいた。
「……なんか、寂しい」
さっきまでの熱い時間。
まるで、夢みたいだった。
ラノベの中の世界に迷い込んだみたいな朝。
けれど、確かに触れられたぬくもりが、今も体の奥でじんわりと広がっていた。
「……溺愛って、こういうことなの?」
胸の奥から、ふわりと再び熱が湧き上がる。
麻里子はその気配を振り払うように、掃除道具を手に取った。
—今日は、いい一日にしよう。そう、思いながら。