その抱擁は、まだ知らない愛のかたち
貴之は、迷いなく麻里子を再び寝室へと連れ戻した。
扉の音が静かに閉じられると、空間は二人きりの世界に変わる。
ベッドに腰を下ろした貴之の膝の上に、向かい合う形で麻里子は座らされた。
視線が重なり、距離はゼロ。逃げ場はない。
「や、やだ……恥ずかしい……」
顔を赤らめた麻里子が身をよじって逃れようとするも、
貴之の手がしっかりと腰を掴み、動きを許さない。
「観念しろ」
そう言う声は低く、温かく、しかし容赦なかった。
観念した麻里子は、ゆっくりと貴之の目を見上げる。
「……どうして、私なの?」
その問いに、貴之の表情がわずかに変わった。
言葉を選ぶように一拍置いてから、静かに話し始める。
「どうして麻里子かって?」
同じ目線に並んだまま、貴之はその視線で麻里子の心を貫くように見据える。
「気がついたら……ずっと、お前を目で追っていた。一年以上も前からだ」
「……え?」
麻里子の目が大きく見開かれる。思いもよらない言葉だった。
「秘書になったばかりの頃から、お前には好感を持ってた。真面目で、仕事も丁寧で、礼儀正しい。でもそれだけだった。最初はな」
声は落ち着いている。けれど、その奥にある熱は隠しきれなかった。
「けれど、一緒に過ごす時間が積み重なるうちに……俺は気づいた。お前の優しさが、心地よくて、嬉しいと感じてる自分に」
「ふとしたしぐさ、目の動き、笑い方……全部が可愛いと思った。女として、意識しないわけがなかった」
麻里子は頬を染め、身じろぎした。けれど、貴之の腕は緩めない。
「お前は、俺がモテるって言うけどな。今まで何人もの男が、お前に近づこうとしてきた」
「……え?」
「全部、俺が水面下で潰してきた。目立たないように、さりげなく。あいつらが、お前に触れられないように」
麻里子の顔が驚きで固まる。
貴之はわずかに笑った。けれど、それは優しさよりも、独占欲の色が強かった。
「“鈴木”って名字が同じだから、俺の嫁さんって呼んできたんじゃない」
「俺は、お前が好きなんだ。手に入れたいと思った。だから、俺だけの女にしたいって思って、俺の嫁さんって言った。冗談じゃない。本気だ」
麻里子の瞳が揺れる。
「お前が否定しても、セクハラだって言っても、やめなかったのは……それが俺の本心だったからだ」
その言葉の重さが、真っ直ぐに麻里子へ落ちてくる。
麻里子は、ぽつりと小さな声でつぶやいた。
「……ほんとう?」
その声音は、信じたいのにまだ信じきれない揺らぎ。
けれど、どこか安堵に似た光も、滲んでいた。
扉の音が静かに閉じられると、空間は二人きりの世界に変わる。
ベッドに腰を下ろした貴之の膝の上に、向かい合う形で麻里子は座らされた。
視線が重なり、距離はゼロ。逃げ場はない。
「や、やだ……恥ずかしい……」
顔を赤らめた麻里子が身をよじって逃れようとするも、
貴之の手がしっかりと腰を掴み、動きを許さない。
「観念しろ」
そう言う声は低く、温かく、しかし容赦なかった。
観念した麻里子は、ゆっくりと貴之の目を見上げる。
「……どうして、私なの?」
その問いに、貴之の表情がわずかに変わった。
言葉を選ぶように一拍置いてから、静かに話し始める。
「どうして麻里子かって?」
同じ目線に並んだまま、貴之はその視線で麻里子の心を貫くように見据える。
「気がついたら……ずっと、お前を目で追っていた。一年以上も前からだ」
「……え?」
麻里子の目が大きく見開かれる。思いもよらない言葉だった。
「秘書になったばかりの頃から、お前には好感を持ってた。真面目で、仕事も丁寧で、礼儀正しい。でもそれだけだった。最初はな」
声は落ち着いている。けれど、その奥にある熱は隠しきれなかった。
「けれど、一緒に過ごす時間が積み重なるうちに……俺は気づいた。お前の優しさが、心地よくて、嬉しいと感じてる自分に」
「ふとしたしぐさ、目の動き、笑い方……全部が可愛いと思った。女として、意識しないわけがなかった」
麻里子は頬を染め、身じろぎした。けれど、貴之の腕は緩めない。
「お前は、俺がモテるって言うけどな。今まで何人もの男が、お前に近づこうとしてきた」
「……え?」
「全部、俺が水面下で潰してきた。目立たないように、さりげなく。あいつらが、お前に触れられないように」
麻里子の顔が驚きで固まる。
貴之はわずかに笑った。けれど、それは優しさよりも、独占欲の色が強かった。
「“鈴木”って名字が同じだから、俺の嫁さんって呼んできたんじゃない」
「俺は、お前が好きなんだ。手に入れたいと思った。だから、俺だけの女にしたいって思って、俺の嫁さんって言った。冗談じゃない。本気だ」
麻里子の瞳が揺れる。
「お前が否定しても、セクハラだって言っても、やめなかったのは……それが俺の本心だったからだ」
その言葉の重さが、真っ直ぐに麻里子へ落ちてくる。
麻里子は、ぽつりと小さな声でつぶやいた。
「……ほんとう?」
その声音は、信じたいのにまだ信じきれない揺らぎ。
けれど、どこか安堵に似た光も、滲んでいた。