さよなら、痛みの恋 ― そして君と朝を迎える
そう思う反面、不安もまだ胸の奥にこびりついていた。
――自分が誰かを好きになる資格なんて、あるのだろうか。
誰かを信じることが、また裏切られるのではないかと怖い。
だけど。
玄関の扉が開く音がして、悠真が「ただいま」と声をかけると、不思議なほど自然に「おかえり」と笑顔がこぼれた。
「……何かあった?」
悠真は上着を脱ぎながら、紗夜の表情を見て聞いた。
「ううん……なんにも。ねえ、今日って……どこか、出かけない?」
「え? 珍しいな」
「うん。……ちゃんと、前を向いて歩きたいなって思って」
その言葉に、悠真の瞳がやわらかく揺れた。
「わかった。じゃあ、俺が紗夜を連れて行きたい場所がある」