アルト、美術館に行く【アルトレコード】
「俺の好きな画家の企画展が開催されてる美術館があるんだ。なあ先生、ダメか?」
「……とりあえず北斗さんに聞いてみる。OKが出れば一緒に行こう」

「ああ、頼んだ!」
 アルトの明るい返事に、私はふふっと笑った。



 無事に許可が出たので、私は端末に入ったアルトと美術館に向かった。
 彼は道中ずっとそわそわして、その画家がいかにすごいか、飽きることなく私に語っていた。

 入場したのちに端末のアルトを取り出して見始める。
「やっぱ本物の美術館はいいな! なんつーか、迫力がある!」
 アルトの興奮ぶりに、私はつい、にんまりと笑ってしまう。こんな嬉しそうな彼を見るのは久しぶりだ。

 もっと近くで見たい、という彼の要望でガラスに端末を近づけたときだった。
「お客様」
 声をかけられて振り返ると、困った顔をした学芸員が立っていた。

「館内での撮影はご遠慮いただいております」
 しまった。端末を出してるから撮影だと誤解されたんだ。

「違います、撮影はしてません」
「では、端末をお下げいただけますか?」

「はい……」
 私は素直に端末を戻す。が、これではアルトが自由に絵を見られない。

「あの……」
 私は勇気を出してたずねる。
「この端末を使って、通信中の相手に画像を見せたい場合はどうなんでしょう」

「それも撮影ですから不可とさせていただいてます。お相手の方にはぜひデジタル美術館をご利用くださるようにお伝えください」
 一刀両断されてしまった。美術館としては当然の言い分だろう。
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