甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
会社を出て、四人で駅前に向かって歩き出す。
いつもの総務飲みの時に使う居酒屋に入り、それぞれ注文を終えると、嘉山さんが思い出したように口を開いた。
「ああ、そう言えば、データ整理はひと段落ついたけど、今回の事がきっかけで、新しいシステムを開発するって話が出てるんだ」
「へ?何それ」
内沼さんが、運ばれてきたジョッキを手に取り、目を丸くする。
「まあ、ひとまず、乾杯」
嘉山さんの声で、私も、置かれたグラスを持ち、ささやかに乾杯。
勢いよくビールを流し込んだ内沼さんは、隣の嘉山さんに尋ねた。
「でも、それ、オレ等、関係無くね?」
「いや、これまでの仕事の中で、ちょくちょく出てた問題点とか、意見が欲しいって事で」
「じゃあ、お前リーダーなんだし、頼むわ」
「おい、コラ」
眉を寄せる嘉山さんは、内沼さんをあしらい、池之島さんを見やった。
「――まあ、全員って訳にもいかないから――頼めるかな?」
「――アタシですか?」
さすがに驚いたのか、彼女は、グラスを持ったまま、一時停止。
「うん。キミ、仕事早いし、いろいろ気が回るからさ」
「――……え、っと……ハイ。わかりました」
私は、チラリ、と、視線を彼女に向ける。
……何だかうれしそうに見えるのは――気のせいじゃない。
――きっと、自分が認められたのが、うれしいんだろうな。
背筋を伸ばし、少しだけ顔を紅潮させた彼女を見やり、何となく、うらやましくなった。
以前の総務飲みの時とは違い、それからの飲み会は、割と穏やかだった。
内沼さんのテンションが高いだけで、私達は、騒ぐ彼を面白く眺めて、普通に食事をしているだけ。
嘉山さんは、自分で日本酒を注ぎながら、私と池之島さんを見やった。
「悪いね。コイツ、酒グセが悪い訳じゃないんだけど――まあ、この通り、うるさいんだ」
「大丈夫ですよ。総務飲みの時は、もっとヒドい人いますから」
池之島さんがあっさりと返し、嘉山さんは苦笑いしながら、私に視線を向けた。
「津雲田さんは、合コンとかの方が良かったかな?」
「――え」
一瞬、ギクリ、と、してしまう。
「アンタ、今さらでしょ」
あきれたように、池之島さんに言われ、思わずうつむいてしまった。
――確かに、美善さんと付き合う前は、マチアプで結婚相手を探していたし――それが有名だったらしいコトは知っている。
「――で、でも、今は……」
「日水主任と別れたんでしょ。なら、別に良くない?」
「そ、そういう訳じゃ……」
私は、持っていたグラスを両手で握り締め、口ごもる。
――……正式に別れたのではないけれど……あれから、プライベートの連絡はまったく無いんだから、そう思われても仕方ないんだ。
今現在、仕事以外に、彼との接点は無いんだから――……。
「でも……合コンは、いいかな」
「――ふぅん」
彼女は、さして興味も無さそうにうなづくと、内沼さんを見やる。
「だ、そうですよ。今度の合コンのメンバーは、他を当たってくださいね」
「ええー……残念……。……営業のコでも声掛けるかなー……」
どうやら、予定があったらしい。
メンバー集めに苦労していそうな内沼さんは、けれど、笑顔で私を見ながら言った。
「あ、でもさ、日水と別れたんなら、ワンチャン、無い?」
「すみません」
まるで、挨拶のように言われ、苦笑いで首を振る。
――もう、私には、そういった出会いは必要無い。
”結婚”がしたいワケじゃない。
――大事に想う人と、一生、一緒にいたいだけ。
――でも――それも、きっと、もう無理なんだろう……。
いつもの総務飲みの時に使う居酒屋に入り、それぞれ注文を終えると、嘉山さんが思い出したように口を開いた。
「ああ、そう言えば、データ整理はひと段落ついたけど、今回の事がきっかけで、新しいシステムを開発するって話が出てるんだ」
「へ?何それ」
内沼さんが、運ばれてきたジョッキを手に取り、目を丸くする。
「まあ、ひとまず、乾杯」
嘉山さんの声で、私も、置かれたグラスを持ち、ささやかに乾杯。
勢いよくビールを流し込んだ内沼さんは、隣の嘉山さんに尋ねた。
「でも、それ、オレ等、関係無くね?」
「いや、これまでの仕事の中で、ちょくちょく出てた問題点とか、意見が欲しいって事で」
「じゃあ、お前リーダーなんだし、頼むわ」
「おい、コラ」
眉を寄せる嘉山さんは、内沼さんをあしらい、池之島さんを見やった。
「――まあ、全員って訳にもいかないから――頼めるかな?」
「――アタシですか?」
さすがに驚いたのか、彼女は、グラスを持ったまま、一時停止。
「うん。キミ、仕事早いし、いろいろ気が回るからさ」
「――……え、っと……ハイ。わかりました」
私は、チラリ、と、視線を彼女に向ける。
……何だかうれしそうに見えるのは――気のせいじゃない。
――きっと、自分が認められたのが、うれしいんだろうな。
背筋を伸ばし、少しだけ顔を紅潮させた彼女を見やり、何となく、うらやましくなった。
以前の総務飲みの時とは違い、それからの飲み会は、割と穏やかだった。
内沼さんのテンションが高いだけで、私達は、騒ぐ彼を面白く眺めて、普通に食事をしているだけ。
嘉山さんは、自分で日本酒を注ぎながら、私と池之島さんを見やった。
「悪いね。コイツ、酒グセが悪い訳じゃないんだけど――まあ、この通り、うるさいんだ」
「大丈夫ですよ。総務飲みの時は、もっとヒドい人いますから」
池之島さんがあっさりと返し、嘉山さんは苦笑いしながら、私に視線を向けた。
「津雲田さんは、合コンとかの方が良かったかな?」
「――え」
一瞬、ギクリ、と、してしまう。
「アンタ、今さらでしょ」
あきれたように、池之島さんに言われ、思わずうつむいてしまった。
――確かに、美善さんと付き合う前は、マチアプで結婚相手を探していたし――それが有名だったらしいコトは知っている。
「――で、でも、今は……」
「日水主任と別れたんでしょ。なら、別に良くない?」
「そ、そういう訳じゃ……」
私は、持っていたグラスを両手で握り締め、口ごもる。
――……正式に別れたのではないけれど……あれから、プライベートの連絡はまったく無いんだから、そう思われても仕方ないんだ。
今現在、仕事以外に、彼との接点は無いんだから――……。
「でも……合コンは、いいかな」
「――ふぅん」
彼女は、さして興味も無さそうにうなづくと、内沼さんを見やる。
「だ、そうですよ。今度の合コンのメンバーは、他を当たってくださいね」
「ええー……残念……。……営業のコでも声掛けるかなー……」
どうやら、予定があったらしい。
メンバー集めに苦労していそうな内沼さんは、けれど、笑顔で私を見ながら言った。
「あ、でもさ、日水と別れたんなら、ワンチャン、無い?」
「すみません」
まるで、挨拶のように言われ、苦笑いで首を振る。
――もう、私には、そういった出会いは必要無い。
”結婚”がしたいワケじゃない。
――大事に想う人と、一生、一緒にいたいだけ。
――でも――それも、きっと、もう無理なんだろう……。