甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
「おはよー、津雲田さん」
「――あ、お、おはようございます、広神さん」
翌朝、部屋のドアの鍵をかけていると、仕事帰りの広神さんが、階段を上りながら挨拶してきた。
私は、頭を軽く下げて返す。
「何か、最近コンビニ来ないね」
「あ、す、すみません」
「いやいや、別に責めてるんじゃないから」
「――えっと……ちょっと、じ、自炊?しようかな、って……」
「へえー、何、いよいよ彼氏サンと結婚?」
「――え、あ」
固まった私を見やり、広神さんは、一瞬、マズい、という表情を見せた。
けれど、頭をかきながら私に、確認するように尋ねる。
「……もしかしなくても……別れた、とか言う……?」
「あ……え、っと……まあ……」
今の状況を説明する気にもなれず、曖昧な返事をする。
「――……そっか。ていうか、原因、オレじゃないよね?」
「い、いえ、違います!……ちょっと、いろいろとありまして……」
彼にすべてを話すワケにもいかないし――そのつもりも無い。
「――なら、オレと付き合う?」
「へ??」
目を丸くした私を見やり、彼は、クッ、と、喉で笑った。
「――冗談。津雲田さん、見てて面白いけど――何か、世話の焼ける妹みたいでさ、放っておけないんだよね」
「……そういう冗談、やめてくれませんか」
けれど、ムスッとして返せば、笑顔のまま、あっさりと返された。
「ゴメン、ゴメン。――まあ、元気が無いのは気になるからさ」
「……え」
「隣の部屋で、毎晩泣かれても、気まずいだけなんだよね」
「――……っ……」
私は、反射的に顔を背けた。
――美善さんと離れてから――毎晩のように、涙があふれているのは、事実だ。
でも、広神さんは、仕事だし、と、声をあまり抑えてなかったけれど――……。
「さすがに、公休日ってモンはあるからさ」
「――あ、す、すみません……」
それもそうだ。
――じゃあ……この数か月、私の泣き声は、騒音のように聞こえていたんだろう。
広神さんは、視線を下げた私の頭を、軽く叩いた。
「え」
「――もう、顔も見た事の無い隣人じゃないからさ、迷惑っつーよりか、心配なワケ」
「――……あ……ありがとう……ございます……」
ひとまずお礼を言うと、彼は、口元を上げて返した。
「ホラ、仕事、遅刻しない?」
「あ、ハ、ハイ!」
私は、急いで鍵をバッグに片付け、階段へ向かう。
けれど、足を止め、振り返った。
「――あのっ……あ、ありがとうございます!」
広神さんは、軽く手を上げると、部屋の中へ入って行った。
「――あ、お、おはようございます、広神さん」
翌朝、部屋のドアの鍵をかけていると、仕事帰りの広神さんが、階段を上りながら挨拶してきた。
私は、頭を軽く下げて返す。
「何か、最近コンビニ来ないね」
「あ、す、すみません」
「いやいや、別に責めてるんじゃないから」
「――えっと……ちょっと、じ、自炊?しようかな、って……」
「へえー、何、いよいよ彼氏サンと結婚?」
「――え、あ」
固まった私を見やり、広神さんは、一瞬、マズい、という表情を見せた。
けれど、頭をかきながら私に、確認するように尋ねる。
「……もしかしなくても……別れた、とか言う……?」
「あ……え、っと……まあ……」
今の状況を説明する気にもなれず、曖昧な返事をする。
「――……そっか。ていうか、原因、オレじゃないよね?」
「い、いえ、違います!……ちょっと、いろいろとありまして……」
彼にすべてを話すワケにもいかないし――そのつもりも無い。
「――なら、オレと付き合う?」
「へ??」
目を丸くした私を見やり、彼は、クッ、と、喉で笑った。
「――冗談。津雲田さん、見てて面白いけど――何か、世話の焼ける妹みたいでさ、放っておけないんだよね」
「……そういう冗談、やめてくれませんか」
けれど、ムスッとして返せば、笑顔のまま、あっさりと返された。
「ゴメン、ゴメン。――まあ、元気が無いのは気になるからさ」
「……え」
「隣の部屋で、毎晩泣かれても、気まずいだけなんだよね」
「――……っ……」
私は、反射的に顔を背けた。
――美善さんと離れてから――毎晩のように、涙があふれているのは、事実だ。
でも、広神さんは、仕事だし、と、声をあまり抑えてなかったけれど――……。
「さすがに、公休日ってモンはあるからさ」
「――あ、す、すみません……」
それもそうだ。
――じゃあ……この数か月、私の泣き声は、騒音のように聞こえていたんだろう。
広神さんは、視線を下げた私の頭を、軽く叩いた。
「え」
「――もう、顔も見た事の無い隣人じゃないからさ、迷惑っつーよりか、心配なワケ」
「――……あ……ありがとう……ございます……」
ひとまずお礼を言うと、彼は、口元を上げて返した。
「ホラ、仕事、遅刻しない?」
「あ、ハ、ハイ!」
私は、急いで鍵をバッグに片付け、階段へ向かう。
けれど、足を止め、振り返った。
「――あのっ……あ、ありがとうございます!」
広神さんは、軽く手を上げると、部屋の中へ入って行った。