甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
LIFE.19
夕飯を食べ終え、私は、帰り支度を始める。
名残惜しいけれど、同棲しているワケでないし――増沢がまた、不意打ちで来るかもしれないので、油断できない。
――男の人の部屋に一人で来た、なんて言ったら、いくら何でも、今度こそヒザ詰めでお説教だ。
その上――キスしたとか……。
そう思った瞬間、先ほどの感触がよみがえって、玄関先で悶えてしまった。
「何してんだ」
「え、あ……し、幸せを噛みしめてました……」
「……っ……」
そう言って美善さんを見上げれば、絶句して固まっている。
「美善さんー?」
「……お前なぁ……」
キョトンと見上げれば、思い切り抱き寄せられ――目の前には、厚い腹筋。
それが、うれしくて、手を回そうとするけれど、届かない。
「……おい」
「うー……届かないー……」
少々意地になり、グイグイと、美善さんに密着する。
すると、あせったように逃げようとするので、更に追いかけてみた。
「おい、コラ、月見!」
「え・きゃっ⁉」
すると、ヒョイ、と、抱き上げられ、思わず彼の首元にしがみついた。
「な、何ですかぁー……」
「――ギリギリのトコで我慢してんだ。煽るんじゃねぇ」
「……だって……私だって、ギュってしたいのに……」
ふてくされながら言うと、美善さんは、大きく息を吐いた。
「――……お前には、まず、男の生態を教育しねぇとか……」
「何、それ」
「まあ、いい。追々だ」
「……えー……」
そして、ゆっくりと下ろされると、彼は、靴箱の上に置いてあるキーケースを持った。
「今日は、送っていくから――良いコでいろよ」
「……子供扱い」
「充分、女扱いだ」
あっさりと返され、言葉に詰まる。
――そして、美善さんは、真っ赤になった私を楽しそうに見下ろした。
「――……美善さん、運転できたんですかぁ……」
「……まあ、公共機関の方が楽だから、そんなに頻度は無ぇがな」
エレベーターで、地下駐車場に降りた私は、先を行く美善さんの大きな背中を見上げた。
送る、と、言われた時には、またタクシーかと思ったけれど――。
「え」
「ホレ、乗れ」
数十台、見た目にも高級車が並ぶ駐車場の中、白い大きな車のドアロックが解除され、私は、目を丸くする。
――……えっと……コレ……結構良い車じゃない?
私は、恐る恐る、美善さんを見上げる。
彼は、あっさりと助手席のドアを開け、私を促した。
「乗り物酔いは?」
「え、いや、バス通勤ですし……」
「それもそうか」
そう言って、乗り込んだ私を確認してから、運転席に回ると、慣れたようにエンジンをかける。
「じゃあ、行くぞ」
「ハ、ハイッ!」
思わず背筋を伸ばした私を見やると、美善さんは、クスリ、と、笑った。
名残惜しいけれど、同棲しているワケでないし――増沢がまた、不意打ちで来るかもしれないので、油断できない。
――男の人の部屋に一人で来た、なんて言ったら、いくら何でも、今度こそヒザ詰めでお説教だ。
その上――キスしたとか……。
そう思った瞬間、先ほどの感触がよみがえって、玄関先で悶えてしまった。
「何してんだ」
「え、あ……し、幸せを噛みしめてました……」
「……っ……」
そう言って美善さんを見上げれば、絶句して固まっている。
「美善さんー?」
「……お前なぁ……」
キョトンと見上げれば、思い切り抱き寄せられ――目の前には、厚い腹筋。
それが、うれしくて、手を回そうとするけれど、届かない。
「……おい」
「うー……届かないー……」
少々意地になり、グイグイと、美善さんに密着する。
すると、あせったように逃げようとするので、更に追いかけてみた。
「おい、コラ、月見!」
「え・きゃっ⁉」
すると、ヒョイ、と、抱き上げられ、思わず彼の首元にしがみついた。
「な、何ですかぁー……」
「――ギリギリのトコで我慢してんだ。煽るんじゃねぇ」
「……だって……私だって、ギュってしたいのに……」
ふてくされながら言うと、美善さんは、大きく息を吐いた。
「――……お前には、まず、男の生態を教育しねぇとか……」
「何、それ」
「まあ、いい。追々だ」
「……えー……」
そして、ゆっくりと下ろされると、彼は、靴箱の上に置いてあるキーケースを持った。
「今日は、送っていくから――良いコでいろよ」
「……子供扱い」
「充分、女扱いだ」
あっさりと返され、言葉に詰まる。
――そして、美善さんは、真っ赤になった私を楽しそうに見下ろした。
「――……美善さん、運転できたんですかぁ……」
「……まあ、公共機関の方が楽だから、そんなに頻度は無ぇがな」
エレベーターで、地下駐車場に降りた私は、先を行く美善さんの大きな背中を見上げた。
送る、と、言われた時には、またタクシーかと思ったけれど――。
「え」
「ホレ、乗れ」
数十台、見た目にも高級車が並ぶ駐車場の中、白い大きな車のドアロックが解除され、私は、目を丸くする。
――……えっと……コレ……結構良い車じゃない?
私は、恐る恐る、美善さんを見上げる。
彼は、あっさりと助手席のドアを開け、私を促した。
「乗り物酔いは?」
「え、いや、バス通勤ですし……」
「それもそうか」
そう言って、乗り込んだ私を確認してから、運転席に回ると、慣れたようにエンジンをかける。
「じゃあ、行くぞ」
「ハ、ハイッ!」
思わず背筋を伸ばした私を見やると、美善さんは、クスリ、と、笑った。